某日、楼蘭皇国の名門財閥、鳳凰院の幼い一人娘が誘拐された。
 犯人の要求は法外な大金と、彼ら秘密結社が画策するクーデターを援助することであった。
 しかし剛毅一徹で知られる鳳凰院の当主は、そのような要求を呑むくらいなら娘一人の犠牲もやむなし、と軍への出動を決断しようとしていたとき――――「この一件、私に任せては頂けないでしょうか。や、見返りはちょっと私の名を覚えてくれる程度で構いませんよ」……当主の前に現れたのは、胡散臭い陰陽師・阿倍野誠明であった。
 どうせ捨てると決断した娘の命だと―――――当主に一任された誠明は、誘拐魔たる結社の根城、富士の樹海へ楼蘭軍人の友人に送ってもらい、単身乗り込む。その結社は実を言うと、ここ最近権威どころか、陰陽の力そのものが完全に没してしまった阿倍野の分家の人間だったので、鳳凰院とコネも取れて身内の恥も消して一石二鳥、というのが阿倍野の考えであった。
 あとついでにいえば、確かその分家の当主さんが、それなりに危ない趣味だったよーなと、迷いの樹海を急ぐ阿倍野。
 そうして辿り着けば、ご覧の有様。年端もいかぬ娘に何をしでかしていますかと、誠明は阿倍野家一子相伝の式神「前鬼」「後鬼」を結社へけしかける。人間ではけして勝ち得ぬ怪物を前に、しかし彼らはあろうことか戦車を5輛も持ち出してきたのである。
――――そういえばクーデターがどうのこうのとか言っていたし、あれで天皇陛下のところにでも向かうつもりだったのかネェ。と独りごちながら、微妙に形勢が傾いていることに焦燥を感じずにはいられない阿倍野。
 どこから密輸してきたのかヴォ連製T-18戦車の37mm戦車砲と8mm機関銃を前に、虎の子の式は為す術もなく、出来ることと言えば破壊される端から新たな式を召鬼するのみ。だがそれとて無制限ではないし、やっとこさ一輛を叩きに叩きまくってスクラップにしたが、それでもまだ4輛もいる。さてどうしたものかと、怯える鶯妃を抱えながら阿倍野誠明が悩んだとき―――――。
「五月蠅いのぅ」
 ふらりと幽鬼のように現れたのは、狐のお面を付けた、鶯妃と同じくらいの童子だった。
 けれどその右手に、大人でさえ両手で持てるかどうかも怪しい巨大な野太刀一振りを携えて、彼女はカラカラと笑う。
「こんな不死(フジ)の樹海で詰まらん俗事なぞしやるのじゃから………〝鬼に轢かれても〟文句はないな?」
―――――祖曰く。
 富士の樹海には真の〝鬼〟が住む……。

 これは、メードもGも未だ歴史に名を刻まぬ、そんな少し昔のお話である。



 




【鳳凰院 鶯妃(8歳)】
 所謂あっきゅんロリ鶯妃。この頃は物スゲーいいトコのお嬢様ってだけの、ごくごく普通の女の子だった。
 なので、そりゃ銃と刀持った大の大人三人に捕まって車に押し込められたら何の抵抗も出来ずに誘拐されたり、地味に貞操の危機に陥ったり、戦車が眼前で暴れたりしてても何も出来ないのは、当たり前だったりする。むしろ普通の大人でも殆ど無理だし。
 しかし、この事件が切っ掛けで、年中ヒマしていたトキハと師弟の縁を結び、父譲りの潜在的一徹さが変なところで大活躍しながらも何千回と黄泉と現世を行き来してたら、数年後には、そんな状況刀一本でどうとでも無双出来てしまう女の子になってしまっていたのだった。むしろ何本携帯してるのか誰も知らないみたいな。
 もしトキハに出逢わなかったら、普通に父親みたいな頑固でドSなお嬢様お嬢様していたかもしれない。
【前鬼・後鬼】
 阿倍野誠明が使役する、阿倍野家一子相伝の式(式鬼)。鬼の形に切られた紙に言霊を送ることで顕現する。紙は事前に儀礼的処置のされた物でなければならず、式の元となる霊の兼ね合いなどもあってそれなりに手間がかかる。前・後と付けられているのは、このクラスの式はおおよそ2体の使役が限界であるためだが、誠明は同時に複数の前鬼・後鬼を連続で繰り出すことができた。
 元が紙だからか容貌は非常にのっぺりとしているが、人間や岩を容易く破壊する膂力や、砲弾(旧時代の大砲)の直撃を受けても朽ちぬ頑強さは(Gやメードが出現する以前なら)まさしく破格の存在だった。しかし戦車など、近年代の兵器の火力と装甲には到底正面来て太刀打ちできる代物ではなく、現代でも当然ながらメードやGには遠く及ばない。曰く、屈強な亜人の戦士にケが生えた程度。
 なお、現在の誠明にこのクラスの式を扱う力は残されていない。

 
【ララスン(8歳)】
 ちょうどルージア大陸戦争が終結する頃のロリララスン。ザハーラ出身となっているが、実際はクロッセルの植民地あたりにいたらしい?
 まぁ色々あって、最終的にベーエルデーに流れ着いたとかんとか。
【阿倍野誠明(現在)】
 胡散臭い。以上。



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